「世界のオザワ」、小澤征爾さんの訃報を聞いて、少なからずショックを受けている人が多いのではないでしょうか。私もその一人です。
朝日新聞に作家の村上春樹さんの寄稿が載っていました。村上春樹さんと小澤征爾さん、お二人の巨匠は親友だったのですね。
ジュネーブのコンサートホールの楽屋で、小澤征爾さんが倒れてこのまま死んでしまったらどうしようと焦ったという話、ウィーンの街角を二人で歩いていたら次々に知り合いに会っては喋るので、散歩が進まなかったという話、ホノルルのカピオラニ公園でバッタリ会った時に、間違えて頼んだ北京ダッグを2つも抱えていたという話・・・。
どの逸話も、国際的で、常識を超えていて、面白かった〜。そして小澤征爾さんのお人柄が滲み出ていました。
「ものすごく魅力的な天才」・・・こんな稚拙な表現しかできませんが、なんと偉大な人を失ってしまったのかと改めて思いました。
そしてお二人の共通点、それは「夜明け前の時間」。
「僕がいちばん好きな時間は夜明け前の数時間だ」
「みんながまだ寝静まっているときに、一人で譜面を読み込むんだ。集中して、他のどんなことにも気を逸らせることなく、ずっと深いところまで」・・・と小澤征爾さん。
追悼番組で、「オペラの指揮をしていたとき、あの膨大な譜面を全て完璧に暗譜していた。あんな人は見たことがない」と言われていたのが、この時間の賜物なんだなと思いました。
そして、村上春樹さんもこう書いておられる。
「並べて語るのもおこがましいのだが、実を言えば僕も小説を書くとき、いつも夜明け前に起きて机に向かうようにしている。静けさの中で原稿をコツコツと書き進めながら、『今頃は征爾さんも、もう目覚めて、集中して譜面を読み込んでいるかな』とよく考えた。そして『僕もがんばらなくては』と気持ちを引き締めたものだ」と。
「彼は貴重な夜明け前の同僚」だったと、村上春樹さん。
お互いに尊敬し、刺激し合う関係、夜明け前の時間・・・何とも言えない、崇高な空気を感じました。
小澤征爾さんのご冥福を心よりお祈りします。
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