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「それね、靴下なんだよね」

私にとって、それは心が震えるほどの衝撃的な記事でした。

高橋亜美さんという女性の体験記。

彼女は虐待によって深い傷を負った子供達と、長年向き合い続けてきた人です。

「その女の子は父子家庭で、児童相談所に保護されたのは小学校5年生の時。中学生のお兄ちゃんがいました。

父親は土木の仕事に従事し、仕事が入ると1ヵ月家に帰らない、ネグレクト(育児放棄)同然の人でした。

なので、風呂にも入れず、毎日同じ運動服を着て、素足に運動靴を履いて小学校に通うのです。

皆からは「汚い、臭い」と馬鹿にされる。家で食事ができないので、空腹は給食で満たしていたといいます。

家に帰るとお兄ちゃんの命令は絶対で、命令を聞かないと、お兄ちゃんは友達と一緒に妹を殴ったり蹴ったりして、鼻血を出すその子を見て大笑いしていたというのです。

私と心が打ち解けるにつれて、だんだんそんな話もしてくれるようになりました。

実習の最後、少女が16才の時です。『児童相談所に保護されて一番嬉しかったことをインタビューする』という課題があって、その子にも聞きました。

私は、『お兄ちゃんから暴力を振るわれなくなった』とか『お腹いっぱいご飯が食べられる』とか、当然そんな答えが返ってくると思っていました。

ところが、思ってもみない答えがその子から返ってきたのです。

『それね、靴下なんだよね』

って。

その子は、児童相談所に保護されるまで、

生まれて一度も靴下をはいたことがなかった

のです。

『保護された時、相談所のお姉さんが傷だらけの足に丁寧にクリームを塗って、その上に靴下をはかせてくれたんだ。』と。

それが、保護されて一番嬉しかったことだと言うのです。

これを聞いた時、私は体が震えるような感覚を覚えました。」

辛い目に遭った子供達とたくさん向き合って来た高橋亜美さんにとっても、その言葉は衝撃的だったようです。

「生まれて一度も靴下をはいたことがない」、、、と言うより「はかせてもらったことがない」。

この一文を読んだだけで、小学校5年生のいたいけない少女の寂しげな表情が浮かんできます。何度思い返しても涙が出るのです。

相談所のスタッフが「傷だらけの足に触れ、クリームを塗り、靴下をはかせてくれた」という行為に、彼女は生まれて初めて「人の温もり」を感じたのでしょう。

それは、

「私はここに居ていいんだ」

「私は愛されているんだ」

と思える、まさに人生を変える体験だったのだと思います。

私は日常、2才の孫に靴下をはかせる時、この少女のことを思い出します。

靴下をはかせる時は、必ず膝の上に座らせ、体のぬくもりを感じながら、髪にも手にも頬にも、触れるのです。

触れながら、自然と愛しさを感じずにはいられません。

そんな体験が一度もないまま、小学校5年生までを過ごしてきた少女、、、

誰も触れてくれない、誰も関心を持ってくれない、愛されている実感が無い、生きている意味を感じられない、、、そんな子供達が、この世の中にどれだけいることでしょう。

両親に望まれて産まれ、愛されて育つ、、、もちろんこれが理想です。

でも、もしそうでなかったとしても、誰がひとりが「話を聴き」、「受け入れ」、愛してあげれば、その人の人生はは変わるのです。

誰かのための、そのひとりになれたら、、、

これが私の

「なりたい自分の一番」

です。

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