「ある朝、目を覚ましたら目が見えなくなっていた」…そんな小説のような出来事が自分の身に起きたのは、2016年、36歳の時だった。
多発性硬化症により、一夜にして視力をほぼ失ってからの9年間をエッセーにつづったのが「見えない世界で見えてきたこと」という本。著者は石井健介さん。(ひと晩にして目が見えなくなるなんて、想像もできませんね)
最初は、病院のベッドでひざを抱えて泣いた。自分なんていない方がいいと思い始めた。
だが、暗闇にも光があった。看護師の明るい声、友人知人からの多くのメッセージ、そして入院仲間の「愉快なおじさんたち」の存在だった。
退院後も何度もつまずく。無邪気に「絵本読んで」と甘える娘を「ごめん、できないんだ」と、遠ざけた場面は切ない。(想像するだけで泣けてきますね)
でも、泣くことを自分に許した。「僕が泣くと、幼い娘が「泣きたい時は泣けばいいんだよ」と背中を叩いてくれた。かつて娘が泣くと僕がかけていた言葉だった。
「人を頼ることも、目が見えていたころは発想すらなかった」
「絶望からの日々を言葉にしながらあふれたのは、つらさではなく、出会った人や言葉へのうれし涙だった」
まさに、「見えない世界になったからこそ見えてきた」ことなのでしょうね。
絶望から希望へ。人の可能性って、本当にすごいな〜。



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