北九州の、ある教会の牧師、谷本さんのお話です。
新型コロナの影響で教会に人が集まれない状況の中、ある日、知人から段ボールいっぱいのパンが届いた。 パンの賞味期限の大半は翌日。
困った谷本さんは、折り畳み式のテーブルを玄関先に出し、パンを並べて「ご自由にお持ち帰りください」と貼り紙をした。
翌々日の昼、今度は泥つきの新鮮なタケノコを友人が持ってきてくれた。片付けずにいたテーブルに、数本を置いた。
その夕方のこと。
「えっ?」予期せぬ光景が目に飛び込んで来た。
まだ残っているタケノコ2本の横に、収穫した手の新タマネギが転がっている。
床に置かれた段ボールの中にもどっさり!
タケノコ放出を知らせた貼り紙には、
「と、タマネギ」
と書き加えられていた・・・というのです。
そのユーモアと善意の心に、思わず頬がゆるみました。
ところで、「どうぞのイス」っていう童話、知っていますか?
最初にロバが椅子の上にドングリを置き、そばで昼寝を始める。そこに来たクマはどんぐりを全部平らげてしまうが、誰かのためにとハチミツを置いていく・・・
一つの椅子を舞台に思いやりが連鎖するという、動物たちの物語。
「コロナ禍で人間同士は触れ合えなくても、モノを介して繋がれる」
そう確信した谷本さんは、絵本をヒントに「どうぞのつくえ」と名付けて、教会の活動として続けようと信者さんたちに提案。
「誰かが助かりそうなものや喜びそうなものを、1つか2つ、持ってきてください。
そして、欲しいものや要るものがある人は、どうぞお持ち帰りを」と。
毎朝9時過ぎにドアを開け、夜8時を回るころには「店」を閉じる。
最近ではとっぷりと日が暮れた閉店前、精米1合入りの袋が次々と静かに消えていく。
「人が見張っていると、取りにくいだろうから」と、店先にいるのはマスクをつけたクマのぬいぐるみだけ。
「『どうぞ』と置く人がいて、『ありがとう』と受け取っていく人がいて」
「バラバラで小さな善意と感謝の交換が、なんとも人間らしくて嬉しくて」と、谷本さん。
一番幸せなのは、側でその様子を見ている谷本さんですって。
コロナ禍の中、なんともいい話じゃありませんか?❤️
この記事へのコメントはありません。