前にもブログに書いた、緩和ケア医の大橋洋平さん。
その苦い思い出を書いておられます。
「今から20年近く前、内科医から緩和ケア医に転身して、1年間緩和ケアの研修を受けていた時のこと。一念発起して転身したものの、最期を迎える寸前の患者にどう声をかけていいか、戸惑っていました」
それはそうでしょうね〜 いったいどうやって向き合えば良いのか、迷いますよね〜
そんな時、高名な先輩医師の回診に同行したら、その医師は一人一人に「おつらいですね」と語りかけている。患者は「ありがとうございます」と涙を流さんばかり。
「これだ!」と思い、ある男性患者に早速「おつらいですね」と声をかけた。すると「つらいんやない、悔しいんや!」と叱られた・・・
「返す言葉がありませんでした。信頼関係がある医師からの『おつらいですね』だからこそ、心に響く・・・万人に心を開かせる魔法の言葉など、ありはしないのです」
そうか〜 確かに、誰に言われるかは大事だけど、それは苦い思い出ですね〜
では、どうすればいいか?・・・大橋先生がその後、実践しているのが「傾聴」。
患者の言葉の中のキーフレーズをそのまま返す。
「悔しいんや」に対しては、「悔しいんですね」と。
これを繰り返すことで、患者に「話を聞いてもらえた」「医者に共感してもらえた」と感じてもらう。
「分かってもらえた」と思うと人間は楽になり、やる気が出る。気持ちが前向きになり、生きる意味を取り戻すことにつながる・・・
そうなんですね〜 お医者さんの仕事の一番大切なところかもしれませんね。
以下は、大橋先生の象徴的な体験です。
「昨年面談した70代の男性がん患者は、まだ治療可能な段階なのに、治療を断りました。『私はちっとも長生きしたくない。我が人生に悔いは無し。自然の成り行きで逝きたい』と話すのです。
『悔いはない』がキーフレーズだと感じたので、『我が人生に悔いはないんですね』と返すと、彼は語り始めました。
『20代で一酸化炭素中毒で妻を死なせ、自分だけが生き残った。再婚は考えもしなかったが、今の妻に出会い、孫まで授かり、幸せな人生だった。悔いはない』と。
彼は最初の妻を事故で亡くしたことを誰にも語ってきませんでした。それを初対面の医師に打ち明けたのです」
若い時の辛い辛い出来事。生涯隠し続け、誰にも言えないことを抱えて生きてきた人生・・・苦しかったでしょうね〜
それを、初めて言葉にして話すことができた・・・どれほど心が軽くなったことでしょう!
「彼はとても晴やかな表情でした」という一言で、傾聴できた喜びがジワーッと伝わってきました。大橋先生、嬉しかったでしょうね〜 「傾聴」をし続けることで、初対面でも打ち明けてくれるほどの力をつけられたのですね〜
「傾聴する」ことで相手の人生が変わる・・・仕事の種類にかかわらず、そんなことができるようになったら、それはどんなに素晴らしいことでしょう‼️
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